Mitsuyuki

― 私の作品について ―

1990年代初頭に大学の短期留学で、ニューヨークに滞在したのがきっかけとなり、マンハッタンの色々な画廊に足を運んだ。東京や福岡で個展を開催してきたがニューヨークの画廊は会期が1ヶ月単位であることが非常に有難く、ニューヨークの画廊街全体が活気に満ち、世界中から多くのアーチストが集まり、時代の先端をゆく空気感に触れることが出来た。画廊や美術館を回りながら、精神的に束縛されることなく感性の赴くままに自由に表現することの楽しさを実感した。
 ニューヨークでの滞在が、自らを客観的に振り返る良い機会となったのも確かである。
自分の絵画表現の拠りどころとして自身の母体である故郷柳川の風土が原点である事を確信した。柳川の自然をテーマにした蒼や緑の色彩を主体とした作品は、幼い時の柳川の町並みやお祭りの記憶、空気・水・土・風・光、そして植物などの感触それらが色彩とフォルムになり画面に再現された。柳川で得た感性を根底にして特にモダニズムの構成や抽象表現の造形を求めて制作を続けてきた。
 2019年にソーホーにあるWalter Wickiser Galleryとの出会いがあり私の作品を評価してくれ2001年8月に画廊企画の個展が実現した。
 この個展は、Art News誌のレビュー欄にも紹介され幸運であった。
8月31日に1ヶ月の会期が終了、日本に帰国10日後、2001年9月11日に衝撃の同時多発が起きた。その後、次第にソーホーの家賃の高騰が続き、多くの画廊がソーホーからチェルシーに移転していった。Walter Wickiser Galleryも2003年に移転した。
移転後、Walterは個展を企画してくれ、グループ展も隔年で招待を受けている。
 柳川の詩情や風土を抽象表現していく過程で、グローバルに普遍的な価値観を獲得できるように現在も制作の幅を広げてゆきたいと思います。

2016年、6月
柳川にて